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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

吉川英治『三国志(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 页

青空文庫

西、北、南の三門はすでにことごとく火の海だという。追々、炎の音、人馬の跫音など、ただならぬものが身近に迫ってきた。

「あっ、敵だっ」

「敵の火攻めだっ」

部将のさけびに曹洪、曹仁も胆を冷やして、すわとばかり出て見たときは、もう遅かった。

城中はもうもうと黒煙につつまれている。馬よ、甲よ、矛よ、とうろたえ廻る間にも、煙は眼をふさぎ鼻をつく。

さらに、火は風をよび、風は火をよび、四方八面、炎と化したかと思うと、城頭にそびえている三層の殿楼やそれにつらなる高閣など、一度に轟然と自爆して、宙天には火の柱を噴き、大地へは火の簾を降らした。

わあっと、声をあげて、西門へ逃げれば西門も火。南門へ走れば南門も火。こはたまらじと、北門へなだれを打ってゆけば、そこも大地まで燃えさかっている。

「東の門には、火がないぞ」

誰いうとなく喚きあって、幾万という人馬がわれ勝ちに一方へ押し流れてきた。互いに手脚を踏み折られ、頭上からは火の雨を浴び、焼け死ぬ者、幾千人か知れなかった。

曹仁、曹洪らは、辛くも火中を脱したが、道に待っていた趙雲にはばまれて、さんざんに打ちのめされ、あわてて後へ戻ると、劉封、糜芳が一軍をひきいて、前を立ちふさいだ。