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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
(夏ちゃん、)
と洒落におっしゃったり、お真面目な時も、
(勝山さん、勝山さん、)と丁寧にお呼びなさる。
その癖、この通り、それはそれは勿体ないほど、ざくざくお宝をお運びで、嬢さんがまたばらばら撒く。土地が辺鄙で食物こそだが、おめしものや何か、縮緬がお不断着で、秋のはじめに新しいコオトが出来ました。
しかしそれも旦那さままかせ。また珍らしい事には、櫛一枚、半襟一かけ、お嬢さんが、自分の口から、欲しいとおっしゃった事がないので。
旦那様は男の事、お気がつくようでもぬかりがあって、ちぐはぐでおかしいくらい。ついこの間も嬢さんが、深川の浄心寺、御菩提所へ、お墓まいりにおいでなさるのに、当世のがないもんですから、私の繻子張のをお持たせ申して、化けそうだといって、床屋の職人にお笑われなすった。――これから先生、婆さんが、その三日前に来て泊ったという、愛吉の野郎のことを話したんでがすよ。
もっとも私もまた、床屋の職人というのが、直ぐに気になったから、床屋の職人? 知己か、といって尋ねたんで。」
「お待ちなさい。」
と金之助は、寝台の上から乗出しながら、
「気に入った! ああ、そこにその人はまさに死なんとしているが、気に入った、といわねばならんですよ。