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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
鍍金の奴、目がくらんで、どたり突倒る。見物喝采。愛吉も、どんなもんだと胸を叩いたは可いが、こっちあ蒼くなって、
(何の意趣だ。)
と突立ち上ると、
(はり手というんだ。お行司に聞いてみねえ。)
と、空嘯いて高笑いをしたでしょう。
こけ勘はこけてるから、あッ気に取られて、黙ってきょろきょろしているばかり。
(可し、相撲にゃ己が負けた、刃物で来い。)
とこちらも銀でさ。すぐに店へ駆け出して剃刀を逆手に取って構えたでしょう、もう目が据って、唇が土気色。」
「どうしたい。」
「火の玉は真赤になって、
(何を、何を。)
ッていいながら、左の肩で寸法を取って、尺取虫のように、じりり、じりり。
(愛吉さん。)
五合ふるまわれたお庇にゃ、名も覚えりゃ、人情ですよ。こけ勘はお里が知れまさ、ト楫棒へ掴った形、腰をふらふらさせながら前のめりに背後から、
(愛吉さん、危え、危え。)
ッて渋団扇で煽いだのは、どういうものか、余程トッチたようだったと、見ていたものがいうんでして、見物わッとなる騒動。
どッちを取おさえようにも真剣で、一人は剃刀だから危うござんす。
その内に火の玉が、鍍金の前を電のような斜ッかけに土間を切って、ひょいと、硝子戸を出たでしょう。