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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
いづれ幾干か飲代でございましょう。それとも、お嬢と、おかみさん、二人へ御婦人ばかりだから、また仕事でもしようというんで様子でも見に来せやあがったか。
から段々落ちに、酒も人間も悪くなって、この節じゃ、まるで狂犬のようですから、何をどう食ッてかかろうも知れませんや。何しろ火の玉なんでね。彼奴の身体のこすりついた処は、そこから焦げねえじゃ治まらんとしてあるんで。へい鼬が鳴いてもお呪禁に、柄杓で三杯流すんですから、おかみさん、さっさと塩花をお撒きなさいまし。おかみさん、」
といったが、黙っている。
「え、おかみさん。」
頸を垂れて屈託そう、眉毛のあとが著るしく顰んで、熟と小首を傾けたり。はてこの様子では茶も菓子もと悟ったが、そのまま身退くことを不得。もう一呼吸ずるりと乗出し、
「何、また何でさ、私どもが、しばらく見張っていてお上げ申しても宜いんでさ。いよいよとなりますりゃ、内にゃ、親方も、今日はどこへも出ないでいるんで、」
「いいえね。」
と女房は、煙管の鴈首を、畳に長くうつむけたるまま、心ここにあらずでもなかったらしい。
「いくらか、飲代どころなら構いはしないけれど、お前さんの話しぶりでもその今の愛吉とかいう若い衆が、火の玉だの、火柱だの、炎だの、小火だの、と厭にこだわッているから心配なんだよ。