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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

……うっかり長煙管を提げたッきり。

ト向うが勲三等ぐらいな立派な冠木門。左がその黒塀で、右がその生垣。ずッと続いて護国寺の通りへ、折廻した大構の地続で。

こっち側は、その生垣と向い合った、しもた家で、その隣がまたしもたや、中に池の坊活花の教授、とある看板のかかった内が、五六段石段を上って高い。そこの竹垣を隔てて、角家がト○の中に(の)を大く(あり)と細筆で書いたのを通へ向けて、掛けてある荒物店。斜かけに、湯屋の白木の格子戸が見える。

椿、柳、梅、桜、花の師匠が背戸と、冠木門の庭とは、草も樹も、花ものを、枝も茎にたわわに咲かせて、これを派手に、わざと低い生垣にし、――まばらな竹垣にしたほどあって、春夏秋の眺めが深く、落葉も、笹の葉の乱れもない、綺麗に掃いたような小路である。

時に、露、時雨、霜と乾いて、日は晴れながら廂の影、自然なる冬構。朝虹の色寒かりしより以来、狂いと、乱れと咲きかさなり、黄白の輪揺曳して、小路の空は菊の薄雲。

ただそれよりもしおらしいのは、お夏が宿の庭に咲いた、初元結の小菊の紫。蝶の翼の狩衣して、子に据えた机の前、縁の彼方に彳む風情。