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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

「まったくねえ、お前さん、溜池から湧いて出て、新開の埋立地で育ったんですから、私はそんなに大した事だとも思いませんでしたが、成程、考えて見ると、そのお持物は、こりゃちと変でしたね。

もうね結構なものとは思わないけれど、今朝お出かけの空模様じゃ、きっと降ろうとも思われませんし、そうかって、一雨来ないでもないようだったもんですから、傘もお荷物と思って、ついそれをね、お嬢さんもまた、澄してさしていらっしゃるんだもの。」歎息するもののごとし。

「ですから、何でさ、日傘をおさしなさりゃ可いというんじゃありませんか。」

「愛吉、笑うというのにね、」

「いえさ、ですから、誰が、」と直ぐ力む。

「でも何ですよ、この辺じゃ不思議がりますよ。

私もね、ありようは持っていましてね、佃島へおまいりをする時ぐらいしか使わないもんですからね、今でも、通用するだろうと思いましてね、」

「おばさんは通用ッていうの。」

「どうかしたんでございますか。」

「それをさ、おささせ申しましてね、暑い時でござんした。

ここへ引越して、しばらく経って、護国寺が直ぐだといいますから、音羽々々ッて音ばかりだったでしょう。