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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

眉も目も鼻も口も、歪んで、曲って、独りで拗ねて、ほとんど居堪らないばかりの心地。

もうお夏の、こう隔てのない、打開けた、――、敵討の、駈落の相談をさるるような、一の(当てて御覧)がなかったら、火の玉は転がって、格子の外へ飛んだであろう。

が、忽然として青天、急にその膝へ抱き上げられたように感じた。ただし不意を喰ったから、どぎまぎして、

「酒、酒です。」

と筒抜けのぼやけ声。しかも当人時ならず、春風胎蕩として、今日九重ににおい来る、菊や、菊や――酒の銘。

お夏は驚いて目をった。真面目に唖然たるものこれを久しゅうして、

「駄目。おばさん、この人はね、酒だか私だか分らないの。ちょいと早く呑まさないと、私を噛ろうも知れないよ。」

「お嬢さん、」と例の敗亡。

「唯今、ですがお嬢さんは、ほんとうに何を買っていらっしゃいました。大概そんなことはありますまいが、もしか、つくと不可ません。」

「可いのよ。先生のめしあがるもんなんざ、ねえ、愛吉、」

「まあ、貴女、」

「可いの。ねえ愛吉、お前が来ると知れているのなら、呼ばなくッてもいいんだっけね。」

首尾は大極上々吉、愛吉堪りかねて、