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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

」

「だってお前、きっと火傷をおしだろう。」

直垂に月がさして、白梅の影が映っても、かかる風情はよもあらじ。お夏の手は、愛吉の焼穴だらけの膝を擦った。愛吉たらたらと全身に汗を流し、

「ええええ、脇腹を少し焦しましたが、」

「可哀相に、お見せな。」

「何、身体中、疵だらけだから、からもう何が何だか分りません。」

とはだかった胸を慌ててかくした。

「愛吉、それでもお前、無事に逢えて可かったねえ、ほんとうによく来たねえ。」

「ですから、ですから、その上がられました義理じゃねえんで、お門口へだって寄りつく法じゃありませんがね、ちとその、」

と口籠った。妾沙汰の一条で、いいかねたものであろう。

お夏はいささかも気に留めず、

「おいいでない。愛吉、お前がそんな事をいって来ないお庇で、私がどんな出世をしたのよ、どんな出世が出来たのよ。」

と詰るがごとく声強く、

「お前たちを袖にして出世をしたってどうするの、よ、愛吉、」

「じゃあ、ど、どうしてお嬢さん、貴女はどうしてどこにおいでなすったんでございますね。」

「芥溜よ。」

「え、」

「私もやっぱり芥溜なの。」

「飛、飛んでもねえ。」

「だって、お前も好なんだから可いではないか。