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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
近所じゃ厭だし、どこへ行ってもしゃぼんをぬらぬらなすくって、暖かい、あぶらッ手で掴まえられて恐れるわ。困っているの、ねえ、愛吉、後生だから、」
「遣りますかね、」
「ああ、」
「や、そいつあ素敵だ、占めたもんだ。ちょうど可いや、剃刀が来ていまさ。」
お夏は車で知っている。
「喧嘩をしたもんだから、よく知っておいでだね、おばさんは忘れて行ったに。あいかわらず、対手さえありゃいがみ合うんだよ。」
愛吉は勇みをなし、
「対手、対手は紋床の親方だけだ。稲荷に仕込まれましたお庇にゃ、剃刀を持たせた日にゃ対手というものはねえんですぜ。まあ、叱言はあとにしてお嬢さん、ちょいとお襟をお預けなせえ。
すっ、するするッと来ら。私あ伊豆の大島へ行きましたがね、から、唐人みたようなお百姓でも、刃あたりが違うと見えて、可いなアーッていやあがるんで。
こう、為朝は、おらが先祖だ。民間に下って剃刀の名人、鎮西八郎の末孫で、勢い和朝に名も高き、曾我五郎時致だッて名告ったでさ。」
「太平楽は可いけれど、何、お前大島ッて流しものになる処じゃないの、大変な処へまあ、」
江の島をさえ知らない娘の驚いたのはさもありなん。