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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
」
鼻を詰らせながら、掌で口を拭って咳一咳。
「私もな、昨年一人、末ッ児を亡くしたですが、それを思い出してもこんなじゃない。」
と椅子をずらして、
「で、何でげすか、どうしても六ヶしいと申すんで?」
「ああ、看護婦がいいます、勿論悉しいことは話さない。
入院した日は、何事もなく静かだったが、一昨日の晩でした。
私は、はじめ串戯かと思った。
うら若い女の声で、
(あつうあつう、)
というのです。
(暑い! 暑い、)
と聞えて、
(暑いよう、暑いよう、)というのが、夢中のようでね。
(快くなりますよ、直によくなりますよ、)とひそひそすかすのが、幽に聞えるから、ああ、それじゃ病人だな、と思ったんです。ひッそりしたっけが、また、
(熱いねえ! 熱いねえ、)
(もう直ぐに快くなりますからね、)
(ああ、)
と調子高に、しかし上の空のようにいって、少し気がついたか、落着いた声で、
(熱いこと!)
こういってね、それッきり。ひッそり陰気になったが、いや、その間、はッと思って、私も呼吸がつけないのでした。」
丹平もしめやかに頷くことあまたたび、
「成程々々成程。」
「二三日もう手はかかりませんから、そこに、」