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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
昨夜から今日の午へかけて、注射を三度したと聞いたです。
そのせいか、今は寂寞しているでしょうがね、さあ、そうと知れると、残酷なようで申訳はないが、血を吐く声も懐かしい、これッきり、声が聞えなくなってどうします。
竹永さん、貴下を今夜は帰さないよ。隣のホテルからお飯が取れるから、それでも食って、病院だから酒は不可んが、夜とともに二人で他所ながらお伽をする気だ。
そうして貴下が、仏像の前で、その言行録を誦する経文だといった、悉い話を聞きましょう。
病人に代ってその人の意気の壮なのを語るのは、少くとも病魔退散の祈祷にもなろうと思う。」
「至極でがす。いや私望む処、先生という楯がありゃ、二日でも三晩でも、お夏さんの前途を他所ながら見届けるまでは居坐って動きません。」
「私も退院の日延べをする。そこで、そこで竹永さん、関戸の邸の、もみじの下で、その最中を食べてからどうしたんです。」
「私もずッと乗が来て、もう一ツお食んなさい、と自分も撮みながら勧めました。
(沢山)とあるから、(それじゃお土産に、)と洒落にいって、捻ってお夏さんに差着けると、腕もちらりと透きそうに、片袖の振を、黙ってこっちへ向けました、受け入れようというんでね。