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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
(成程、お囃子ですな。)
と腕組をして、おつき合いに天窓を突出していると、
(どこでしょう、ほんとに好いこと。)
といって葛桶を――じゃない――その陶器の床几をすっと立ちました。
(ええ、御近所だから、慶喜様のお住居かも知れません。)
(そう、)
といって、お夏さんが空を仰いで見ましたがね……」
虹を刻んで咲かせた色の、高き梢のもみじの葉の、裏なき錦の帳はあれど、蔽われ果てず夕舂日、光颯と射したれば、お夏は翳した袖几帳。
「ちょうど、ぱらぱらと散って来るのが、その夕日を除けた、袂へ留まったのですがね。余りに綺麗だ。これにゃ相当のワキ師があろう。
もっとも大抵禿げていますで、諸国一見の僧になりゃ、ワキヅレぐらいは勤まろうが、実は私、狂言方だ。
楽屋で囃子の音がすれば、もう引込んで可い時分。フト気が着いたのは、悪くすると、こりゃ出家でない。色ワキをここで待合そうなどという、寸法で来たのかも知れん、それだと邪魔になる。さらば急いで参ろう、と思いますとね。
妙なことをいいました。
その大木のもみじの下を、梢を見たなり、くるくると廻って、
(いいえ、お雛様が遊ぶんでしょう。