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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
とんだいいお傅役として、彼はいらい、坊ッちゃん付きを兼任の恰好でもあった。するうちに、いつか一ト月、盆の七月十五日をここで迎えた。
お盆には地獄の釜の蓋も開く。
大牢の城門外にある獄神廟と地蔵寺では、例年盂蘭盆会の当夜、さかんなる燈籠流しの魂祭がおこなわれる。
「さ、お坊っちゃま。お供して参りましょう」
昼からさんざんせがまれていた朱同は、たそがれ、まだ燈籠流しには早すぎるが、主人の唐子を肩ぐるまに乗ッけて、長官邸から遠くもない地蔵寺へ出かけて行った。
いやたいへんな人出である。地獄極楽の見世物やら、刀玉採りの大道芸、皿廻しの掛け声、煮込屋の屋台、焼鳥屋の煙など――。山にはひびく梵音の鐘、池には映る俗衆の悦楽。これやそのまま浄土極楽か、地獄の四生六道か。なにしても、うごきもとれない人の流れだ。
「おヒゲ。おヒゲってば、お待ちよ」
「はいはい、坊ッちゃま。おしッこですか」
「ちがうよ。乳母が見えなくなっちゃったよ」
「え。乳母さんが。……ああいけねえ、どこかへ迷子にしちまった」
探し歩いたが見当らず、施餓鬼から裏の大きな蓮池をめぐり、石の反り橋を渡って来ると、こんどはほんとにお坊ッちゃんが、オシッコだと言い出した。