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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「いやそんな心配しないでくれ。牢城の長官に目をかけられて、俺もなんとかやっている」
「だが、君の流刑を聞き、また君が俺にしてくれた友誼の厚さに、山泊の頭目連中は、どうしても一度君に会いたいといってきかないんだ」
「だって、俺は牢城の刑囚だ。どうにもならんさ!」
あたかも、彼のこの言を待っていたもののように、そのとき、木蔭から別人の声が、否と答えた。
「美髯公! あなたほどな男一匹が、なにもそんな鎖にとらわれていることはない。ひとつ、まかせてくれませんか。われわれに」
何者か、と朱同は驚いた。その目の前へ、にこやかに出て来た者は、山泊の軍師呉学究、あの呉用学人であったのである。
晁蓋、宋江をはじめ、泊中の一統は、どうしても朱同を仲間に迎えたいとなって、衆議、ここへ雷横をさしむけて来たもので、呉用はその説得役をひきうけて来たことらしい。
だが、呉用のどんな説得の弁にも、朱同は「うん」といわなかった。彼には彼の信条がある。たとえ官憲の手先といわれ、刑囚の身と落ちても、真人間の潔白は維持していたいとする性来の背骨があった。
「どうも、それほど、いやだと仰っしゃるものならぜひもない。