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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
かくまでの取りなしに会っては、朱同もなおそれでも不服とはいえなかった。ではそうしてと、やがて主客五名、一閣のうちに卓を囲み、
「いずれ次には、お預けの黒猫を、迎えに来ずばなりますまい」
などと、大いに笑い合った。
いや李逵はムクれた。無知だの野蛮だの黒猫だのと、さんざんな玩具である。忌々しさよと、朱同を睨むと、朱同もまた、胸中千丈の焔がほんとにはまだ鎮んでいないので、ぐッと睨み返す。心火の闘いだ。それへ酒が注がれる。物騒なことといったらない。
「これは」
と気づいたので、館の主は、侍女にいいつけて、弾琴をとりよせた。主は七絃琴のたしなみを持ち、朗詠が上手であった。微吟、風流、おのずから荒ぶる男たちをも優しくなだめた。
「はははは。つまらんお耳よごしじゃったな」
一曲を終って、また酒になる。朱同はそこで、さっきから独りしていた自問自答を率直にきいてみた。いったいこの地方などにはあるはずもない宏壮萃麗なこの邸館は、どういう由緒の家なのか。またお主は何者なのか、と。
そのつぶさを知って、朱同はあらたに、一驚を喫した。
ここの家は、五代の末期、宋の太祖の時代に地方へ降りたもので、祖先の柴世祖は、帝位にあった幼君だった。