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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「いやもう、あきれた奴だ。またぞろ、その二丁斧で、思慮もない事件を起してしまったのか!」

彼の報告をきいた晁蓋以下の領袖たちは、頭ごなしに、こう叱りつけて。

「ところで、きさまは難をのがれて来たようなものだが、あとの柴進大人はどうなるのか。ただではすむまい」

「すまねえでしょうが、あとはご自分でひきうける。なんでも、きさまはこの場を逃げろ、と仰っしゃるんで、是非もなく」

「はアて、後難が案じられる」

と、呉用、宋江、林冲などもみな眉をくもらせた。これらの者はみな王道政治の糜爛腐敗を身に舐めて知っている。かならずや柴進の主張などは通るまい。一刻もはやく恩人柴進の安否をまずたしかめぬことにはと、さっそく、

「ご苦労だがひとつ、高唐州へ行って、仔細、調べて来てくれまいか」

と、神行太保ノ戴宗へ、一同から声がかかった。で、戴宗は、

「おやすいこと」

と、即日、彼が得意とする神行法を利用して高唐州へ飛び、日時およそ半月ほど経て、ふたたび泊中へ帰って来た。

「さてこそ、やはり! ……」

戴宗の報告を聞きすました満座の眉色は、一瞬、しいんと恩人の受難を傷み、また鬱々たる義憤に燃えた。