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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

黒面猿がチョコンと揺籃に乗ったような恰好に眺められたからである。しかし宋江のみは、彼にしても罪を償わんとする責任感はかくも強く持っているのかと、ちょっと瞼を熱うして。

「妙案妙案。出来したぞ李逵。――だが百尺の地底からでは声も合図もとどくまい。その辺へ銅鈴を二ツ三ツ括り付けてゆけ。銅鈴が鳴ったら上から綱を引き上げてやる」

「合点だ。たのんまッせ」

はやスルスルと綱は下ろされた。そして降りて行けども行けどもまだまだ底へは達して来ない。そのうちにぶらんと途中で止まってしまった。李逵は仰向いて呶鳴ッた。

「やアーいっ。どうしたんだよウっ」

すると、上では、おそろしく遥かな声で。

「一ト休みしてろやアい。綱が足りなくなったから、いま取りにやったんだよウっ。――繋ぎ足したらまた下げるからなアっ」

やがてやっと、李逵のお尻がどすんといった。――李逵は竹籠を這い出し、そこらの冷やっこい岩肌を撫でまわした。案外ひろい。水溜りもある。するうちに、ぐしゃっとした物に触った。人間にちがいなかった。恩人柴進さまか。大旦那、大旦那と、耳のそばで呼びつづけてみた。

返辞はない。しかし、かすかに呻いた感じがする。