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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
そしてこの呼延灼、韓滔、彭の三大将軍がひきいる三軍、あわせて一万四千の豼貅(猛兵)がいよいよ都門をたつ日の旺な光景といったら形容のしようもない。凌雲閣上、天子もみそなわし、衛府以下八省の官人、満都の群集も堵をなして、花を投げたり爆竹を鳴らしたりした。あわれむべし、ここの庶民は、梁山泊が庶民の味方とは何も知っていない。ただ聞くがまま残忍無比、鬼畜同様な乱賊とのみ聞いている。
このあいだに、初春をまたいで、野は残雪まだらに、若草の浅みどりを呈していた。大陸の霞は渺として果てなく、空ゆく飛鴻はこれを知らなくても、何で梁山泊の油断なき耳目がこの情報をつかまずにいようやである。
「……ま、ご意見もいろいろ出たが、こんどは一州一県の田舎城を揉みつぶすのとは、ちとわけが違う。熟慮を要そう。慎重が要る」
今日もここでは評議だった。大寨の聚議庁である。晁蓋、呉用、宋江――おもなる領袖と山将のほとんどが顔をそろえている。
「軍師。さっきから再三ここで、軍師軍師と声をかけてるのに耳をすっぽかしておいでなさる」
「李逵か。なんだ」
「禁門軍の一万や二万がなんですえ。あっしを先鋒にやっておくんなさい」