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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
ああ……このうえ烏騅まで盗られたとあっては、いよいよわが輩の面目はない」
数日後。彼は青州へ入っていた。
奉行の慕蓉は、取次から彼の名を聞いたとき「はて?」と大いに怪しむ風だったが、会ってみると、まちがいのない呼延灼なので、
「将軍! いったい、どうしたんです?」
と、仰天した色だった。
「武人として……」と、呼延灼は惨とした面を伏せて「じつに、面目ない始末だが、まあ聞いてください」
と、つつまず、恥を語り終った。そして、仰ぎ願わくは、もういちど、軍のご派遣をゆるされ、この身に雪辱の一戦をなさしめ給わるよう、伏して、おとりなしのほどを……と、男泣きに、九拝して、言った。
「よろしい。将軍は滅多に人へ額ずくべきではありません。将軍は将軍の権威を取りもどすべきだと私も考える」
慕蓉は同情して、さて言った。
「……がしかし、朝廷へ奏するにしても、恩賜の馬まで失ったとは申し上げ難い。それにじつは、この青州所轄の地域でも、桃花山のほか、二龍山、白虎山などの賊塞があり、猛害をふるッて熄まず、わが奉行所でもてこずっておる。ひとつ将軍がここで、烏騅をとり返す事のついでに、それらの賊徒をも掃討してみませんか。