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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
同様に。――一方の呼延灼の方でもまた、陣場の床几で、息を休めながら、
「いや危なかった。あいつら、どっちも、盗ッ人ずれの手並ではない。武芸は禁軍の専売だと思っていたら大間違いだわ」
と、これも胆を寒うしていた。
ところがこの夕、意外な早打が、奉行慕蓉の鎮台から馬を飛ばして来た。
「将軍。すぐ軍をかえしてください。ご命令です」
「えっ。どういうわけで」
「三山の一寨、白虎山に住む孔明と孔亮と申す賊が、城内の手薄を知って、急に押し襲せてまいったので」
呼延灼は仰天して、陣をたたみ、夜どおしで青州へ引っ返した。
とはいえ、いかに城内の手薄を知ったにしろ、白虎山の賊徒が、どうしてそんな積極的な挙に出てきたのか? 途々、使者に訊いてみると理由はこういう次第だった。
古くから、白虎山の下の大庄屋に「孔家」という名門の一家がある。
なかなか人望もあって、兄を毛頭星の孔明、弟を独火星の孔亮といい、壮丁や小作の百姓もたくさん抱えていたが、去年、町の大金持に騙されて、伝来の田地山林をのこらず法的に差押さえられ、その懸合い中に、つい若気の兄弟が、金持の一家を鏖殺するという大事件をおこしてしまった。