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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

李俊、張順、楊春たちである。船上に躍り込むやいな、二人の警固を川へ取ッて投げた。為に、飛沫は船上をぱッと濡らした。

「あっ、ひかえろ。李俊も張順も、大臣閣下をおびやかすではない」

宋江が、せつなに、こっちの舳で叱ると、その二人はまた、身を逆さまに、どぶんッ……と沈んで行ったものである。なにしろ“揚子江ノ三覇”といわれた河童たちのこと。自分で投げ込んだ水中の人間を手玉にとり、水をゆくこと平地のように、やがてひらりともとの船へ上がって来た――。これを見ていた宿大臣はいうまでもなく、官人すべて、ぞうッと、肌をそそけだてた。

衣冠が燿く世界でなければ、衣冠や栄位も、一個の木ノ実、一枝の草花にも値しない。

宿大臣閣下は、供奉の随員、宮廷武官、小者など、あわせて六、七十名と共に、ごッそり、少華山の人質となってしまい、意気も銷沈、粥も水も、喉に通らぬほどな悄ゲかただった。

「大臣、――ここへ来ては、もうご観念のほかありますまい。おいのちは保証する。まあ数日は、ゆるりと、ご静養のおつもりになって」

「宋江とやら。なぶるのも程にしてくれ。たとえ命があったところで、どう朝廷へ、こんな始末を提げてもどれようか」