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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

そして身は仙境を思わせる香のけむりと一山の僧衆が粛と、整列するなかをすすんでいた。すでにご病中との触れなので、偽大臣はお轎のまま中庭の客院までずッとそのまま通ってしまう。――勅使旗やら内府の官服、献納物の儀仗、だれひとりこれを疑って見るものはない。

「観主」と、呉用は、客殿に大きくかまえて。

「怠りも、はなはだしいではないか。なんでお出迎えにおくれたか」

「申しわけございませぬ。まったく、万端のととのえはして、お待ち申しておりましたれど」

「叱りおくぞ。近ごろ、緩怠きわまる!」

「はっ……」

「それに奉行もまだ見えんようではないか」

「おそらくは、まだご存知なく、当寺より走らせた使いによって、仰天しておらるるものと思われまする」

「使いはやってあるのだな」

「追ッつけお見えになるでございましょう。いや取る物もとりあえず」

「ま。なんじらは、倖せと思うがいい。折ふしご勅使の宿大臣閣下には、ご不快のうえ、いたく今日はお疲れのもようで、あれあのように、まだご休憩の間でも、お轎の内を出で給わず……、為に、何らのおとがめも出ぬが、これがもし、お元気であらせられたら、ご立腹はいかばかりであったと思う」