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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「御物の燈籠をささげて、殿司寮の者、お鍵番の者、粗相なきよう、これへ出ませい!」

おーと、これもはるか遠くの返辞。やがてのこと。螺鈿櫃を抱えた宮廷人と見える者と、紅錦の袋に入れた鍵を持った鍵番とが、一歩一歩、つつしみぶかく、そこへ来て、奉行の賀の前で、その蓋をはらった。

さんぜん、眼もくらむばかりな八角燈籠があらわれた。地金すべて、黄金なのはいうまでもない。迦陵頻迦のすかし彫である。蓮の花は白金だし翠葉は青金だった。万花の彩りには、琥珀、さんご、真珠をちりばめ、瓔珞には七ツの小さい金鈴と、数珠宝珠をさげるなど、妙巧の精緻、ただ見恍れるのほか、ことばもない。

「げに、ありがたき聖徳にござりまする。かく近々と、拝させていただき、奉行の身にとりましても」

「冥加と思われるか」

「ただただ、かたじけなく」

「しかるに」と、宋江がことばをかえた。「なにゆえ、勅使のお迎えを怠ったか」

「ふしぎや、何の伝令も、城内へございませんでしたので。……どうも腑におちかねまする」

「ふしぎとは何事。ただいま、中書省の公文、恩賜の燈籠、あわせ見て、一点の疑義でもあるか」

「おそれながら、ただひとつ」