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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
そういう裁きには手馴れている。わが輩を娘御の部屋へ案内するがいい」
「娘は昨日から泣き沈んでいて、人さまにお会いするどころではございません」
「会わんでもいいよ。娘御は早くどこかへ隠してしまえ。そしてわが輩が花嫁になり代って、寝台の帳を垂れて寝ておるから、賊の周通がきたら、盛大な祝宴と見せて、たっぷり酒を飲まして連れてこい。……いや、それまでの間、わが輩も独りで閨に待つのは退屈で堪らん。花嫁の部屋にも酒を忘れるなよ」
劉老人は、ためらうより恐れ気味だった。しかし、一族大勢がやってきて、だんだんに智深の説得を聞き、盲亀の浮木で、ついに彼の策にすがった。
そこで智深は、宵のまに、花嫁の部屋に隠れこみ、そこの帳を垂れて、寝台に横たわった。もちろん彼にも饗膳と酒が供されたので、鱈腹たべて、寝こんでいる……。
が、ときどき眼がさめた。もう何刻ごろか。表の方では、花聟の列でも着いたのか、銅鑼や太鼓の音。そして“聟迎えの俚歌”などが賑やかに聞えだしている。
「……ははあ、そろそろ祝宴が始まったな」
その辺までは知っていたが、またいつかぐっすり寝入ってしまったらしい。