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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
ところで、私の運勢をみていただけましょうか」
「まず、お生れ年と、月日を」
「本年三十二歳、甲子ノ年、乙丑ノ月、丙寅ノ日、丁卯ノ時刻に生れました。……が先生、金が入るとか、損するとか、そんな日常茶飯事は、貴筮に伺う必要はありません。ただ男子の三十、生涯の方途如何という、そこのところの運勢を篤とみてくだされい」
「こころえた」
呉用は、香炉台を借り、香を薫じ、おもむろに算木を几にならべ始めた。そして筮竹をひたいにあてて、祈念三礼、息をつめて、無想境に入ったと思うと、その相貌はまったく人間の肉臭を払って、みるみる聖者のごとき澄みきったものに変った。盧俊儀も、はっとその真剣さに打たれてか、共に息をこらして、伏羲神農の呪を念じずにはいられなかった。
するうちに、ばしッと筮竹を割り、算木の表裏を反して、卦を現わすやいな、
「あっ。これは?」
と、呉用があらい息の下に呟いた。
盧俊儀は、横からさし覗いて。
「先生、何と出ましたか」
「はてな。……いぶかしい」
「吉ですか、凶ですか」
「ご主人」
「はっ」
「失礼ながら、てまえはあなたを、ひとかどの人物と観た。しかるに、なんとも神易の告げはよろしくない。