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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
何が出て来ようと、ここに玉麒麟の盧俊儀がおる! わしが相手を斬り伏せ叩き伏せたら、きさまは人夫を督して、それらの賊どもを片ッ端から車の上に積んでしまえ! 泰山詣での土産として、北京府の官へ突き出してくれようわい」
すると、ことばの終らぬまに、ザ、ザ、ザ、ザッと、躍り出てきた者がある。手に二丁斧をひらめかせた黒人猿のような男だった。
「とうとう、おいでなすったネ、北京の旦那!」
「やっ、うぬは何日ぞやの」
「おおさ。旅の売卜者について、お宅へ顔を見せた唖の童僕だよ。ジツの名、黒旋風の李逵だ」
「さては何か?」
「もうおそい! 気がつくのが遅すぎらあ」
「うごくな、食わせ者」
棒が唸った。二丁斧の一丁がカンと鳴る。
とたんに、両者の戦う影に、ちぎれた草が舞い、梢の葉が雨と散る。だが、ヒラッと黒旋風は次の一瞬に逃げ出していた。それを追って行くとさらにまた、一方の木蔭から黒い薄法衣を体に巻いた大坊主が現われて、
「待った。わが輩は花和尚の魯智深。せめて、わが輩の挨拶はうけてもらいたい」
と、鉄の禅杖をつきつけて道をはばめた。
「なに、あいさつだと」
「そうだ。じつあ、お歴々な山の兄貴たちからいいつかり、おめえさんを迎えにここまで出ばって来たんだ。