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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
数珠つなぎの人と馬とそして貨車とを追い立てていたのは、挿翅虎の雷横であり、また美髯公の朱同であった。
二人とも、盧を目前に見ると、呵々と大笑して。
「御用か。御用とあれば、もっけの幸い。この車にお召しあっては如何なもので」
「だまれっ。罪もない召使や雇い人夫。そこへおいて去れ。去らぬとあらば」
「どうなさる?」
「かッ」
と、盧は心火を燃やした。理のほかだ。力で見せ、血で物を解らせるしか、意志のとどく相手ではないと思った。だからこの一刹那からの彼のまさに名にしおう河北の三絶(傑物ノコト)玉麒麟その者の本相だった。日ごろ秘していた武芸と剛胆とをその姿に極限まで描いて雷横、朱同の二人を相手に火花をちらした。――といっても、それはまたつかの間で、彼はいつか当面の敵も手下の群れも見失い、どこか高い所でする簫、絃、鉄笛、板(一種のカスタネット)などの奇妙な楽奏の音に、はっと耳を醒まされていた。
気がついてみれば、自分はせまい一渓路に立っており、渓流をへだてた彼方、硯の如き絶壁の中層には、紅羅の金襴傘を中心に、一座百人以上な人影が立ちならんでいて、上には、
替天行道