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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

盧はギョッとして見廻すばかり……。何のことはない、三ぞう三ツ巴に、こっちの舟へ絡み絡み漕ぎめぐっている按配。

「おい、船頭。早くやってくれ、早く」

「船頭だと。へへへへ、旦那え。……船頭にはちがいねえが、俺を一体なんだと思いなさる。上は青空、下は大江、オギャアと泣いたときから、潯陽江の水を産湯に男となった混江龍の李俊、いやさ今では梁山泊のお一人だ。これほどまでにみんなが手をつくして仲間入りをすすめているのに、まだいやだと仰っしゃるならぜひもねえ」

「どうする?」

「しれたこと。命を貰うだけのもんだ」

「なにをッ」

せつなの一剣は、盧の体まかせに、相手のみずおちを見事突いたかと見えたほどな迅さだった。が、とたんに李俊のからだは、とんぼを打って水中に隠れ、舟は飛沫の中に傾斜し、剣は空を突いていた。

「や、や、や? ちいッ、しまった」

彼は不思議な水の渦を見た。舟は独楽みたいに空廻りし初めている。のみならず、艫端に人間の腕だけが見える。盧は北京育ち、泳ぎを知らない。しかるにそのとき、

「旦那え。ご案内に来ましたよ。水底へさ。……ついでに、この面も覚えておきなせえ。浪裏白跳の張順だ!」