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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「断る! 毛頭そんな気もちは持ち合していません」
「でも、切にひとつご一考を」
「一考の余地もない。死すとも嫌だ。どうにでもおしなさい」
「さようにご憤怒では恐縮します。ではまた、明日にでも」
すでに酒宴の設えができている。衆の歓語、満堂の和気。ぜひなく盧俊儀も杯にかこまれた。さてまた、次の日も宴だった。馬、羊を屠り、山菜の珍、水産の佳味、心入れでない物はない。幾めぐり杯もまわった時分、宋江はかさねて言った。
「ここは以前、聚議庁とよび、前の総統晁蓋の亡きあと、忠義堂と改めました。そして仮に私が寨首の椅子についていますが、元来、その器ではありませぬ。ぜひどうか昨夜お願いの一儀は、ご辞退ありませぬように」
「む、ご真実の色が見える。それにたいしての礼儀、私も率直に言いましょう。――不肖ですが私、かつて犯した罪とてなく、家は北京に古いし、財にもめぐまれているのです。いうなれば、生きては大宋の人、死すとも大宋国の鬼。それが望みだ。そちらのご希望にはそいかねる」
「伺えば伺うほどお慕いが増す。あなたさまも、大宋国を愛す人。われらといえ国を愛す念では全く変りもない」
「いいや、どうあろうと、かかる所に身をおくことはできません。