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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

わしがわしの家へ帰るのに」

「でも、夏の初め頃、李固が帰って来ますってえと、その日から李固と奥さまとは夫婦気どり、おまけにご主人は梁山泊に入って賊の副統領になったから再び北京にもどることはない、と雇人一同に触れるばかりか、お上へまで訴え出て、親類がたの証判も取り並べ、財産名義の書き替えまでやりかけているんです。だんなさま、うっかりすると、お命もあぶない……。どんな罠にはまるかしれませぬ」

「ばかをお言い!」と盧はかえって燕青の正気を疑った。「――わしの家内にかぎってそんな不貞の女ではない。しかもだ。わしの家は北京で五代の旧家、家憲がある。番頭の李固にしろ、なんでさような大それたまねができるものか」

「でも大旦那、人間です、人間なんて、一つ狂うと、何をしでかすか、分ったもんじゃないってことを、わたしはこの眼で」

「まだいうかっ。あらぬ讒訴もいい加減にしろ。ははあ、なんだな、何かきさまこそ、わしの留守中に、色街の妓にでもひッかかって」

「めっそうもない! 大旦那、なさけない!」

「ええ、そうに違いないわ。離せっ。せっかくなわしの帰宅を不愉快にさせおって」

廬は、蹴放した。