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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
しかし流刑人送りの練達者として、この二人の端公の腕は、たしかに抜群だったものだろう。管領庁でも彼らが付いて行くからにはと万々途中は安心と公文その他一切の手順もすすめられた。
――首かせは嵌められ、二本の水火棍に小突き立てられ、行くて三千里の道へ、盧は素はだしで歩かせられた。
木賃宿の朝夕、端公は囚人を、奴僕のようにこきつかう。これらはやさしいことである。四、五日も旅するうちには、すでに盧俊儀その人の面影はどこにもない。飢え疲れきッた無力の奴隷、いやいや、そんな形容ではまだ足りない。
「おい。董公。ちょっくら、こいつの腰鎖を代って持っててくれ」
「なんだよ薛公。こんな山ん中で」
「生き物だもの仕方はねえ。用達しがしたくなったんだよ」
「ぜいたくを吐ざいてやがる。垂れ流しに歩き歩きさせたがいいじゃねえか」
「囚人じゃねえッてばさ。おれがするんだよ、おれが」
「はははは、おめえが催したのか。それ、やって来ねえ」
腰鎖をうけとって、ぼんやり立っていると、彼方へ行ってかがみこんでいた董公がギャッと一ト声叫んでころがり伏した。
驚いた薛覇が、上を見て、あッ――といったと思うと、これまた、クルクルッと体を廻してぶっ仆れた。