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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
その竹籠の中には、蓮の葉にのせた桃色の牛肉や酒や野菜などをのせている。智深は眼を光らせた。
「あいつか。この寺に巣を作って、おまえらには物も食わせないというやつは」
「そうです、あれが飛天夜叉とアダ名のある丘小一で」
「ほかにもう一匹、崔道成とかいう化道がいるわけだな。ようし、いま見た牛肉はわが輩が食ってやるぞ」
「およしなさい。そ、そんな真似をなすったら、すぐご一命はありませぬ。のみならず、私たちまでどんな目にあうか知れません」
「わはははは。なにをガタガタ慄えるのだ。まア見ておれ。おまえらにも、今夜は肉の一片ずつをお布施してやるから」
豹のごとく、智深は跳びだして行った。手には鍛えてまだ日の浅い錫杖が、はがねの匂いも立つばかり光っていた。
とも知らず行者の丘小一は、むかし方丈の庭でもあったらしいところまでくると、荷を下ろして、待っていた二人の者と、なにか笑って話している。――見れば、大きな槐の下に、一卓をすえ、崔坊主は、一人の若い女を擁して腰かけていた。
女を中に挟んで、すぐ酒もりにでもかかるつもりか。陶の器、杯などを、卓の上へ並べだした。ところへ、のっそり魯智深が近づいてきたので。