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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
――なお交渉の余地あることをわざとそこに見せておいたのだ。――城中の大牢にある二人の者の露命につつがなかれと、切に祈る気もちから。
だがこれは、双方にとっての微妙なかねあいだ。梁中書も、獄中の者を殺しはしない。時を稼ぐためにである。
中書の急使は、その南大門を忍び出て、はや昼夜、都へ向って、馬にムチ打っていた。使者は腹心の王定という者だった。日かずもまたたく、彼は帝都開封東京の城に着いた。だが、宮内府の一門にたどり着くやいな、気のゆるみでか、気絶してしまった。
大臣蔡京は、憂いにみちた眉色で、白虎節堂の大臣席に着席している。
ほかに五大臣、また、枢密院長の童貫、枢密院の全議員、各司庁、司署の長官らが、しいんと、満堂にみちて、彼の口もとをみまもっていた。
「みな、聞かれたであろうが」
蔡京が言った。
「……いま、北京府の急使、王定が訴えに聞けば、これを一地方の擾乱とだけでは見過ごせん。天下の兇事、大宋朝廷のご威厳にかかわる」
沈痛な語気だった。
この蔡大臣、かの梁中書には岳父にあたるひとである。つまり中書夫人の実父なのだ。――当然、私の情愛と心痛もある。