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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
こいつもまた、医術はうまいが、呑ン兵で助平で暢気坊ときているフラフラ医者。いつも家にいるとは限りませんでね」
王定六は、自分の着物から十両の銀子まで貸して、張順を、一日も早くと、建康府へ立たせてやった。それに力をえて、彼が、城市では槐橋のそばと聞いた、安道全の宅まで来てみると、折もよく、ちょうど店の一ト間に薬研をすえて薬刻みをしている彼の姿が見えた。
「こんにちは。……どうも先生、お久しぶりで」
「はてね。おまえさんは?」
「お忘れかもしれませんが、たった一ぺん、おふくろの腫物を癒していただいたことがございましてね。はい。潯陽江の張順と申すんで」
「げッ、ではあの、梁山泊へ入ッた?」
「大きな声をしなさんな。じつは、宋公明さまが云々なわけで、命旦夕にせまっている。あっしと一しょに、すぐ行っておくんなさい」
「そ、そいつはムリだ」
「無理を承知のお願いです。この通りに」
「でも、じつは、わしの家内も病気でな」
「ご家内は、まさか、命旦夕ではございますまい。帰ったあとで、ゆっくりと、女房孝行して上げればいいじゃございませんか」
「じゃというて、山東の遠くでは」
「おいやですかい。