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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
不気味な谺、キ、キ、キ……と腸をしぼるような何かの軋み。――じっと、見ていた洪は、そこが開くやいな、洞然たる暗やみの中へ、まっ先に躍り入って、
「どうだ、それ見ろ、何事もないではないか。なにが厳秘の門か、なにが咒封か。わははは、みんな入れ」
と、両の手を、天井へ突ッぱり、愉快きわまるものの如くであった。
――が、余りの暗さだ、歩いてみても何も見えない。彼は、また大声で、奥でどなった。その声は、空洞にひびき、ひとつ言葉が、二つに聞えた。
「おういっ。松明をとぼせ。一同、松明を持って、儂のあとから進んで来いっ」
窟は、仏体の胎内にでも象ってあるのか、口はせまく、行くほどに広くなり、四壁には、諸仏、菩薩、十二神将などの像が、彫りつけられてある。
「や。あぶない」
洪は、一石碑に、つまずいた。
松明を呼んでよく見ると、ここばかりが円い広場となっている。冥々昏々、幾百年もの間、太陽の寸光も知らない冷土なのだ。それに六尺ほどな板碑が、にょっきと建ち、台石となっている石彫りの大亀は、碑を背に載せて、千古、眠りより醒めず、といったふうである。
「こりゃ読めん。石碑の表に、何やら細々と彫ってあるが、全文、神代文字らしい。