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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
その没羽箭張清の勇姿をたたえたものには、「水調歌」という時の流行曲に、一ト節の詞がある。
鍍金兜に、照り映える
茜の纓は、花に似て
狼腰を、鞍つぼに
片手づかいの左太刀
右手には持てり、石つぶて
つぶて袋の底知れず
打つや流星
放てば飛電
矢つがえ無用、強弩も要らぬ
たてがみ青き、駿足に
靡け行く、雉子の尾羽ネの駒飾り
葵花のあぶみよ、揺れ鳴る鈴よ
没羽箭、ああ、去るところ
風は蕭々たり、敵屍あるのみ
「ころすな! 討つな! 手捕りにしろ」
宋江は、旗の下から馳け出して叫んだ。
けれど、すでに味方の群雄も、門旗をうしろに、必死だった。なかんずく盧俊儀は、
「この敵に背は見せられん」
と、あわや馬を張清へ向って駆らんとしている。
むらがる諸将は「盧大将を討たすな」と、これまたわれがちに彼を庇う。そして代って躍り出た金鎗手の徐寧は、近づきもえぬまに「あッ――」と眉間を抑えたまま落馬し、つづいておめきかかった錦毛虎の燕順も、相手の投げたつぶてにどこかを打たれたらしく横ッ飛びにあらぬ方へ馳けてしまった。
そもそも、没羽箭張清の得意とする“礫”ほどやっかいな物はない。近づけば左手の閃刀が片手使いのあしらいを見せ、離れればたちどころに、一塊の小石を発矢と飛ばしてくる。