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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

大宋国の北から東の大山脈をさかいとして、その彼方の蕃地には遼(韃靼のわかれで契丹ともよぶ)という大国がある。

遼は、南下の野望がさかんで、つねに辺疆を侵しては、山東、山西をおびやかし、河南、河北を掠め、またあらゆる手段の下に、いつかは物資文化の花ゆたかな宋へ攻め入って、これを併呑してしまおうと侵略の機をうかがっているのだ。

ところが、それも思わぬ大宋の朝廷やこの国の上下は、めぐまれた土壌と文化の上で、腐敗と乱脈をみずから演じ、長夜の夢を貪ッているが、こんな現状をなお長くしていたら、ついには蕃土の遼から攻め入られて、あっというまに、宋は遼に変ってしまうにちがいない。

それでいいのか。生を宋の国にうけたわれらが、それでいいとしていられるか。

「誤解しないで欲しい」

と、宋江はさらにいった。

「――いつの日か天子のお召があれば、欣舞してそれにお応えしたいと私が歌ったのは、私の多年の宿望には違いないが、しかし、一身の安穏や栄達を願うためでは決してない。ただ国を思うからだ。そしてわれらの称える“天ニ替ッテ道ヲ行ウ”その志を遂げるには、天子の大赦をえて、勅の下に働かねば、どうしても、誠の働きは発揮しえないからでもあるのだ。