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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「おかげさまで、てまえもすっかりいい顔になり、お大尽もまた、えらいおよろこびでしてね、へえ、都一の李師々大夫にも会えて東京へ来た効いもあったと、たいそうなご満足。ですが、ゆうべは、つい、おっかさんにお礼もせずに戻ったし、いずれ郷里からも何か珍しい物を送らせるが、これはほんの寸志、よろしくと、おことづけを頼まれてまいりました」
お内緒へと、こがねで二百両。楼中へと、べつに五十両、帛紗にのせてそれへおいた。
「あら、これを」
「どうか、お納めなすって」
「まあ、お義理がたいお大尽さま。いまはどちらにいるのだえ」
「河岸を代えて、廓の入口のお茶屋に休んでいらっしゃいます」
「なにサ、まあ水臭い。そこまでお出ででいながら、顔も見せてくださらないなんて。張二さん、はやくお連れしておいでよ」
「だって、いいんでしょうか」
「上元のおまつりだもの。大夫もこん夜はつまらないお客は断わって、あとであたしと飲もうと言っていたところなんだよ」
燕青は、しめたとばかり、飛んで帰って宋江に首尾を話す。もちろん、初めから宋江のさしずであったのはいうをまつまい。
この夜、宋江は、例の柴進と戴宗のほかに、もひとり厄介者を連れていた。