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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
日をかさねて、泰州に入る。
四山六岳のお社廟を彼方に、泰山街道はもうえんえんと蟻のような参拝者の流れだった。多くは相撲の噂でもちきりである。そして麓町まで来ると「太原之力士、天柱任原、茲有」と大幟が立ててあり、幟の下には「拳ハ南山ノ虎ヲ打チ。脚ニ北海ノ蒼龍ヲ蹴ル」と二行に書いた立て札まで建っている。
「ちッ、目ざわりな……」
と、燕青は札を引ッこ抜いて、発矢と、かたわらの岩へ打つけて、叩き割ってしまった。
「やあ、たいへんだ。えらいことをしやがったぞ」
「ことしは、札を叩き割った相手が出てきた」
この噂は、嵐のように、大岳じゅうの人から人へつたわった。
それも、どこ吹く風かの顔をして、燕青は一軒の講中宿に寝ころんでいた。
初めからの条件なので、李逵は病人をよそおって、頭から夜具をかぶったままで口かずも余りきかない。そして相撲の当日も、一切、見物の中でおとなしく見ているという約束なのだ。
そこへ、どやどやと近づいて来た大勢の足音と共に、案内して来た宿の番頭らしいのが、
「へい、へい。関取のお弟子さんがた。その、腰に柄太鼓を挿した若い旅商人というのは、この部屋のお客でございますがね」