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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「たれが」
「知れたことを」
「気のどくだが、いちど上がった舞台、てめえを叩きつけて、ご見物に得心をつけるまでは、ここを退がるこっちゃあねえんだ。……ええ、お侍さまたち」と、一方へ向っては小腰をかがめ「まことにお情けはありがとうございますが、殿さまにはよろしくお伝え下さいまし。こんな薄汚ねえ獣を、天下無敵の何のと吐ざかせて、この日下を人もなげに歩かせておくわけにはまいりません。へい、男はここに一匹いるのですから」
燕青はどうしても承知しない。のみならず、騒ぎだしたのは数万の見物である。「やらせろ!」「よけいな水はいれるな!」「役人どもは引っ込め」と、喧々囂々、木の実を投げる、石が飛ぶ。まちがえば暴動にもなりかねないような狂気めいた騒ぎだった。
桟敷からはまた、追ッかけの使者が走ッていた。「ぜひもない、引きさがれ」という旨らしい。で一同は颯と桟敷の方へひきあげる。見物はこの様子に、わが意を得たかのごと万雷の喝采を起して、よろこぶこと限りもない。すでに舞台では、任原があらためて屹立していた。対するは、花の刺青。山の如き相手にたいして、なんと小さく見えることか。