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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「気のきかんやつだ。酒を持て、酒を」
と、呶鳴る。その量がまた、ちょっとやそっとの酒量ではない。運んで来るそばから碗を傾けて、およそ一斗も飲んだろうか。気がすむと今度はたちまち飯をがつがつ平らげて、ゆらゆらと立ち上がり、
「こら一同の者、法廷へ出ろ。一匹でも逃げ隠れなどすると、引きずり出して首を捻じ切るぞ」
と、破れ鐘のような声でこうご託宣をくだしたのである。そして彼は広間の法廷に出て、壇の中央にある知事席に腰をすえ、大真面目で、槐の笏を胸のまえに構え込んだ。
炊事場の爺や婆やから小使、書記、諸役人らは仕方なしに、みなぞろぞろ来て壇下の床に首を揃えて平伏した。李逵は突如、本ものの県知事閣下になったような気がして来たらしい。睨み渡して、
「一同っ」
「へへい」
「どうだ、似合うか。俺の官服姿は」
「ようお似合いでございます」
「ところで、これから裁判を開くぞ。みんな面を上げろ。この中に泥棒がいるだろう」
「じょ、じょう談ではございません。てまえどもはみな役人で」
「わかっておる……だが泥棒がいなくては裁判にならん。うむ、前列の四番目におる奴、きさまは人相が悪い。召捕れッ。