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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「それっ、たたんじまえッ」
とは声ばかり。智深の体にたかッたと見えたものは、みなそれ、一颯に目を眩す蠅の旋舞といささかの違いもない。――智深は早くも番所小屋の高床に戻って、
「あははは、わはははは」
と、独りで腹を抱えている。
溜に沈没した仲間のチンピラを、どうやって救いあげて帰ったろうか。想像してみるだけでも智深にはおかしい。どうもこの畑番、至極退屈な役と思っていたが、とんだよい景物が近所に見つかった。愉しい哉、世の生きものども。ちょいちょい野菜泥棒にも這い込むがいい。時により、智深にも仏心なきに非ずだぞ――と、彼はそれからというもの毎日、むしろ彼らの現われるのが、心待ちに待たれた。
だが、ごろつき街の連中にすれば、それどころかは、額を集めての、薄暗い密議まちまち。
「さあ、みんな、しッかりしろやい。こんどの番所坊主は、いままでの瓜頭とは瓜の恰好も違うと思ったら、ちょっと中身も違うらしいぜ。なんとか一度、ぶッ砕いてやる思案はねえか」
十数日の後である。練りに練った一計を秘したものか、蛇李と鼠張の二人が、番所の小屋に謝罪りにやってきた。「……先日は乾分どもの悪戯。