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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
えらいところへ迷い込んだもの」
慌てて後へ戻ろうとしたのである。が、時すでに遅かった。靴音たかく、さっと一方の扉を排して現われた将軍がある。これなん、かつての毬使い高毬、いまでは殿帥府ノ大尉にして徽宗の朝廷に飛ぶ鳥落す勢いの高であった。
「こらっ、なにやつだ。節堂を窺う曲者は」
「あ。高閣下ですか。お召しによって伺うた師範林冲にござりますが」
「なに、お召しによってだと。いつ汝を呼んだか。そんな覚えはないッ。怪しい言い抜けを」
「いや、いや。確かに陸副官のお使いをうけ申して」
「陸謙、居るかっ。この者を召捕れっ。わしを暗殺せんと近づいた者があるぞ」
「あっ! なんで拙者が」
すでに彼の四方は鉄桶のごとき兵士で取り囲まれていた。その中には、顔もよく知っている副官陸謙の姿も見える。林冲は、それへ向って、
「使いをよこしたのは、貴公じゃあないか。家にある貴公の手紙が何よりの証拠だ。なんで拙者をこんな目に会わすのか。おいっ、笑いごとじゃあない。返事をしたまえ」
怒りをこめて叫んだものの、陸謙はてんで受けつけない。
「はははは。ばかな血迷い言を。……なんで一師範の汝を、高閣下がお召しになろうぞ。