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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

さあ、この和尚の背に、おンぶするがいい」

「冗談じゃない。囚人の身が」

「なんの遠慮だ。大相国寺の菜園で、おたがいは義の杯を交わした仲じゃないか。きさまはわが輩の弟分だぞ。さあ兄貴のいうことをきけ」

こうして、数日の旅は、花和尚が彼を背に負って歩き、端公らは、荷持ち、走り使い。また旅籠旅籠では、下男のごとく、追い使われた。

おかげで林冲の足はすっかり癒え、毎日の食養も充分にとられたから、以前にもます健康に復してきた。しかも道づれは刎頸の友、端公は従者のかたち。――行くてに待つ運命も長途の苦も忘れて、思わず数十日は愉しく歩いた。

「兄弟。名残りは尽きないが、明日はもう滄州でまえの近県に入るそうだ。今夜はひとつ、別れの思いを酌み合おう」

花和尚は、その夜の木賃宿で、鄙びた別宴を設けさせた。お互い心ゆくまでと、酌しつ酌されつはしていたが、さて離愁の腸、酔いもえず、

「……豹子頭。おぬしの心がかりは、おそらく都にある愛妻や舅の身の上だろうが、智深はまだ当分、大相国寺の菜園にいるつもりだ。よそながら見ているから案じなさんなよ。それとここに持ち合せの銀子がある。地獄の沙汰もなんとやら、これを持って」