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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「これが恐れられずにいられましょうか」

洪大将が、すごすごと下山する日も、院主は、未来を予言して、くり返しくり返し、哀嘆してやまなかった。

「――百八の悪星とは、つまり惑星のことです。この宇宙幾万年、太陽の周りには、億兆の星が、行儀よくめぐっていて、かりそめにもその法則をみだすことはありません。――が、惑星という奴は、例外です。常軌を行かず、申しわけに、太陽のまわりに、隠現明滅しているにすぎない。世間、人界の仕組みも、まったくその通りなのです。――それを、あなたさまには、好んで、もとの無軌道へ追ッ返しておしまいなすッた。なんとまあ、人間の業とは、尽きない宿命のものなのか……。思うてもごらんなされ。五代の戦乱に懲りて、あんなにも、世は平和平和と渇望していたのに、その平和も、宋朝数十年、少し長つづきしてくると、もう平和に飽いているような昨今の世相ではおざらぬか。救いがたい人間性と申すべきか、平和の退屈さから、百八の魔星を甦えらせて、ふたたび際限ない乱麻の地上を眼に見たくでもなったものやらと思われますわい。……ああ。やんぬる哉、いくら嘆じてみても、もう追いつきませぬ」