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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「こいつはおそらくただものじゃねえぞ。夜明け次第、管営さまのお役所へ届け出ろ。ひょっとしたら、ご褒美ものかもしれねえぞ」

と、わいわい、どよめき合っていた。

するとほどなく、村長が飛んできて、

「たいへんだぞ皆の衆、たったいま、柴進さまのお屋敷の壮丁が飛んできて、捕まえた男は、手荒にするな、侠客大尽の柴進さまが、以前、世話をなすった男だというこった。――いますぐこれへ、柴家の衆が引き取りにくるそうだ」

「えっ、柴の大旦那の知り人だって。そ、そいつは飛んでもないことをしてしまったわい」

「いや、何もお叱りはねえよ。だが決してこのことは口外するな、もし口外したやつは、村にはおかぬぞというお達しだぞ。村長のわしの立場もなくなる。みなの衆、頼んだぞ。牢城営へはいっさい唖になっててくれよ」

――さて。この夜の騒ぎも七日、十日と過ぎていつか噂も下火となっていたころ。

村の名望家、例の小旋風柴進のやしきの奥まった一室で、あるじの柴進の前に、その懇情にたいし、心からな礼と、別れの辞をのべていたのは、余人ならぬ豹子頭林冲であった。

あの夜。この柴家の内へ、助けられてきて、さまざまな手当をうけたことも、そのときは全く覚えもなく、翌日、聞かされたことだった。