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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「そうだろう。だが夕方の帰りがけには、しこたま猪の肉や鳥を土産に置いてくからな。酒も届けさせておこうよ」
「そいつは愉しみだ。お願いしますよ旦那」
「心得た。だが役目は役目だ。一応、供の連中を一人一人調べてくれ」
「御法度の明るい旦那のこと。そんな必要はありませんや。さあお通ンなすって」
「でも、万一お供の中に、お尋ね者の人間が紛れこんでいたらどうする」
「わはははは。ご冗談を」
「はははは。じゃあ、ご免っ――」
同勢三十余人。まんまと、こうして馳け通ってしまったのだった。
やがて十里も行ったところで、林冲一人が、その中から途をかえて別れ去ったのはいうまでもない。以後、彼の旅路は二十日あまりの山野をいそぎ、やがて朔風肌を切るような雪もよいの或る日、見わたす限り蕭条として葭や枯れ芦の江岸にたどり着いていた。
渡船場らしい水際に、酒屋の旗をかかげた茶店が見える。そこで、一杯ひっかけているうちに、一と癖ありげな茶店のおやじが、じろと林冲を眼で撫でまわして。
「旅人。あんたアこれから、山東のどこへ行こうって、おつもりだね」
「そいつアこっちから聞きたいところさ。亭主、ここの渡舟はどこへ行くのか」