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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
……ところが昨年のこと、徽宗皇帝が、万歳山の離宮にお庭作りを営まれるに当って、制使十名を、西湖へご派遣になり、西湖の名石をたくさん、都へ運ばせることになった」
「なるほど……」
「拙者も制使の一人だった。そこで西湖の花木竹石の珍を大船に積み、黄河を下ってきたところが、運悪く、途中でひどい暴風に遭い、ついに役目も果し得ず、面目なさに、そのまま田舎に身を隠しておるうち、やっとこのたび赦免の令が出たというわけでな……」
「いや分った。それで都へ帰る途中でしたか」
「いかにも、都へ帰って、もいちど以前の官職につき、家名を復さなければ先祖にすまん……と思って、要路の大官どもに贈る賄賂の品々を荷物となし、これまで来ると、いきなりそれに居る林冲とやらに斬りつけられ、二つとない首を、あぶなく進上してしまうところであった。はははは」
聞いて、林冲も初めて、口を開いた。
「申しおくれたが、自分も以前は、近衛ノ将軍高の下にいて、禁軍師範の職にあった豹子頭林冲と申す者。……だんだん伺ってみれば、貴公とは、以前の同僚のようなものだが、もしや御辺は、あだ名を“青面獣”と呼ばれていた楊志殿ではないのか」