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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
それには彼も二の句がなく、今年もまた、早くから頭を悩ませている風だった。
「ねえ。どうなさるおつもりですの。……今度は」
「だからさ、今年もすでに、心がけて、すでに十万貫に価する珍器重宝は、この北京の古都を探って、ひそかに庫に蒐めてあるわさ」
「いいえ。それよりも、その高価な宝を、どうして無事に、東京のお父さまのもとまで届けさすことができるか。そのご要意のほうが、かんじんではございませぬか」
「それには、人だな。なんといっても、よほど信用のおける人物でのうてはかなわぬし、さらには、いかなる賊と出会っても、断じて負けをとらぬ勇者でもなければならぬ」
「この北京何十万の軍には、それに適う一人の人物もいないのですか」
「いや、そんなことはない……」と、あわてて彼は言い消した。
「――勇者はいる。武術の達人も少なくはない。だが考えてみい。十万貫の重宝といったらたいへんな富だ。いかにわしの蓄えと俸給でも、そんな多額な金目の物を、一私人としては、都の岳父に贈りうるはずのものではないからな。……腕ぶしばかり強くても、腹ぐろい人間には、このことは打明けられぬし、使いにも差向けられんというわけだ。