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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「はははは。そんな内輪ごと、なにも、初めて知ったわしではないよ」
「でもネ、折がまずいや。……小五哥いも、目が出ねえらしいが、どうも早や、あっしら兄弟は、みんな、ばくち好きの、ばくち下手ってやつでしてね」
「近ごろ、いけませんかな」
「近ごろなら、先生、まだいいんですがね、もう一年以上も、取られっ放しの、素寒貧つづきですよ。魚をとったぐらいじゃ、いくらとったって、間にあわねえ」
「小二哥い、およしよ」と、小七が横からいった。「つまらねえことを、お耳に入れたって、頭を掻いたくせに、自分からまた、シケたぼやきをお聞かせするたあ、どんなわけだい」
「ちげえねえ。先生、笑ってください」
「はははは」と、呉学人は、彼らの註文どおり大いに笑って、「――いつも、おまえ方は、明るくていいな。運は時のものだ。時が来れば、あっち向きの花も、こっち向きに咲き変る朝もある」
言いながらも、じつは心のうちで、これは脈がある、わが計なれりと、ほくそ笑んだ。
漕ぎゆくほどに、村の漁師町が望まれてきた。旗亭の旗も見える。橋畔の家々の洗濯物も見える。舳はずんずん岸へ寄せていた。
「ああ先生。いい都合だった。